管理人の独り言
le monologue
「立ち上がる物語」
1月に武蔵野美術大学の卒展に行ったときに目を惹いた作品の中に、芸術文化学科の学生さんのガリ版についての考察がありました。「ガリ版」懐かしい。今ではパソコンもスマホもあるので、ほぼ使われていないと思いますが、私の小学校の頃のプリントといったら、ほぼこれでした。ロウ引きしてある紙に、やすり板の上で鉄筆とよばれるペンで削ります。それをインクをつけると、削った部分が紙に印刷されるというしくみです。(思えば、銅版画と同じ原理なのかも)考察も興味深かったし、その学生さんとしばしおしゃべりをさせてもらいました。
開催中の「立ち上がる物語」を見て、ふとこの時のことを思い出しました。この展示は印刷をテーマにしたものではないし、「ガリ版」とも何の関係もありません。でもどこか相通じるものがあるのです。
この展示は本という媒体を通して、物語が立ち上がる瞬間をテーマにしています。
例えばカンレイカさんのこの作品は、本は紙でできていない、薄い金属でできています。この濃いグレーで硬質な素材から生まれる物語は、歯ごたえのありそうな内容を想像させます。

村川晴南さんの作品は、紙の中に言葉や写真を閉じ込め、吊るすことによって、浮遊感や不安定さを感じます。

ソウタンニさんの作品は、虫食いの文庫本、太宰治の「人間失格」。金属の虫が食べているところが「人間失格」らしいなとほくそ笑んでしまいます。

小品が多いので、派手さはありませんが、こういう展示好きなんだよねぇ。本もニュースもデジタルでなく紙で読みたいし、紙類が好きで文学が好きな私にとってはたまらない展示です。
どうぞひとつひとつじっくりご覧ください。いろいろな物語が想像できる素敵な展示です。5月12日まで開催しています。是非お越しください。